2018年10月4日木曜日

テレビ番組「これが私のけもの道~女猟師29歳の奮闘記~」(放送済み)

 JNNドキュメント。長野では2017年12月20日放送、TBSでは4月24日放送
 SBC 写真が少し載っている。

 幾つかのシーンをメモします。
 長野県のとある村に住み始めた女性が、猟友会に入る。

・女性は高校は畜産科、生物資源学部出身
 7年前 大学卒業後、自然体験施設に就職、地域おこし協力隊、任期後に就職。
 家賃1万円の村営住宅
 冷凍専用庫は前開き、引き出し5段
 猫を飼っている。保健所行きのものを貰った。

・ベテラン猟師は、巻き狩りをする前日に下見をする。
 何十年とやっているから、車上からでも獣道や濃さが分かる。

 途中、車から降りて、獣道を解説。
 この足跡は4、5日前。 ゆうべの跡ならこんなに乾いていない。
 昔は向こうの尾根から犬を放した。みんな元気で若かったもん。
 もう、この奥入る猟師が誰もいねえもん。

・犬を使った巻き狩り。
 11月15日解禁
 村で唯一の猟犬(紀州犬)が子犬を生んだので、その年は猟の開始が遅れる。

 12月2日。初猟5人と犬1匹
 女性は集合時間に遅れ、先輩を待たせる。(タツの打ち合わせをしている所に来る)
 長靴を忘れ、取りに戻る。
 ベテランからのアドバイス。
  獲物が来たらどの辺を撃つ?肩甲骨を狙え
  寝屋の跡の説明。ここで待つ。

・ベテラン猟師に同行し、タツマで待って鹿を待つ。
 ベテランさんはボルト式のライフル?
 リューポルドのスコープで、1倍からの対物レンズが小さいシルエット。

 若い女性は20番の自動銃(薬莢が黄色い)
 光学機器は無し。アイアンサイト付き

 もう一人の犬を連れたベテランは、スライド式の散弾銃にスコープ。
 対物レンズが大き目なので、1倍からではなさそう。
 鹿6頭に走られるが、林内ということもあり失中。
 この日は捕れなかった

・猟期前の射撃練習
   銃を持って3年。
 2枚同時放出のトラップを練習。
 女性は100枚中27枚
 どうすれば当たるようになるか?と射撃場の休憩所でベテランに聞くものの、「こればっかりは答えがないんだ射撃は。体感スポーツだもんで。こうやってごらんなさい当たりますっていう決まりはないんだ」と返される。

 飲み会で「戦力にならん。山の感度が悪い。ここへ行けっても行けんもん」と言われる。
 女性「だって分からないですもん、難しい」

・鹿の個体数の推移グラフ(全国)
・米農家 7枚中3枚が収穫前に全滅。 稲穂を食われる
 猟友会で田畑を調べ、近くの山に罠を仕掛ける。
 8月の有害。罠にかかった鹿を女性が銃でとめる

 畑を荒らされるし、生活をその中で成り立たせている人にとっては有害なんだろうけど、有害鳥獣とかって呼ばれているもんで、すごく悪いものみたいに言われるとちょっ違うんじゃないかと思ったりはします。難しい。
 立場によって全然違うし、都会の人にとっては全然有害鳥獣ではないだろうし。うまくまとめられない。

 食肉利用は1割(全国の話)
 女性はジビエ加工施設で働く
 レストランが視察。
 毛をピンセットでとる
 レソトラン側)ヨーロッパから取り寄せたらあばらの筋と皮の間にいっぱい毛が。
 レストランとしては骨がほしいという話。

 皮を冷凍して保存。
 けもかわプロジェクト
 高校で皮鞣しの体験。皮から肉を外す

 12月8日 今シーズン2回目の猟。
 ベテランと座って待つ。
 ベテランが来たとささやき、座ったまま構える。
 ベテランが1発撃つ。ボルト式だが、次弾装填がうまくいかない。
 女性は撃てず。
 3頭いたらしい。

 反省会の居酒屋
 安全だったら撃たなきゃ当たらない。
 宝くじ買わなきゃ当たらないのと一緒で、安全だったら遠くてもいい、自分で撃ってみたいと思ったら撃てばいい

 翌日はグループで1頭仕留める
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 以下、感想など。

 猟師の高齢化と同じように、猟犬を維持できるかという問題があります。
(参考記事:とある町の狩猟者の年齢構成と、県別の高齢化率ランキング
 犬を飼うには世話をする場所、費用、時間が必要ですし、どうやって猟犬に仕上げていくかという技術も必要。
(雑誌「けもの道」や「全猟」が猟犬については詳しそう)

 犬を飼える庭があり、毎日散歩に行くなど世話が出来て、猟犬として仕込める人は、減ってきています。
 現在飼っている人は高齢化し、猟に出たり、散歩ができないようになっていく。
 犬を飼える田舎に住んでいても、サラリーマンであれば、毎日の散歩などが大変。

 「犬を使った巻き狩り」は伝統的な狩猟方法で、技術としてもある程度完成されており、巻き狩りならではの面白さもあります。
 今後、銃猟者の減少と犬の維持が困難になる可能性もあるので、それ以外の方法も模索すべきでは。
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 テレビで紹介されていた猟隊は、装備は比較的自由で、猟友会の帽子とベストという規定はなく、同等の目立つものならOKらしい。
 ベテランは迷彩ズボンと長靴。

 無線はイヤホンを使っていない。ちょっと珍しいパターン。
 発信はともかく、受信はイヤホンが多いと思うのですが…


 猟前のミーティングでは、誰はここに立てなどの口伝のみ。
 自分の場合の地元の猟隊もそうですが、地図は使いません。
 犬のドッグマーカーでGPSを使っているのだから、図面を使って作戦を立てた方が分かりやすく、記録も残せて良いのでは。

 女性に対しての飲み会で「戦力にならん。山の感度が悪い。ここへ行けっても行けんもん」と言われたのは、土地が分かっていないという意味が大きい。
 何十年も巻き狩りをやってきた人と、移住して数年の人を比べられても…
 「巻き狩りを仕切れる後継者を育てる」という意図はあるのか?


 射撃の練習方法も口伝という印象があります。
 猟友会が狩猟者の養成や、射撃技術向上の役割を果たしていない。

 リアルな練習教室を開くのも1つの方法ですが、それ以外に教本を作るのでもいい。
 これまで50年以上猟友会がありながら、体系化されたテキストはないのか。


・新人をどうやって育てるか
 師匠役の個人に任せず、大日本猟友会や県といったレベルで、組織としてサポートする方法も考える。
 射撃の技術、痕跡の見つけ方、山の歩き方など、色々な要素がある。
 ベテラン猟師ですべてを把握している人がいるかもしれないが、その人が師匠に向いているかは別問題。
 その地域に、技術を引き継ぐ若い人がいないかもしれない。
 口伝ではなく、誰でも使える資料として残しておけば、何年も使えるし、伝達力がある。
 インタビューする人がいて、出版ベースの採算性をクリアすれば本になるが、別に本にする必要は無く、資料として残せばいい。
 クマにあったらどうするか―アイヌ民族最後の狩人 姉崎等 
 群馬・奥利根の名クマ猟師が語る-モリさんの狩猟生活


・趣味の狩猟なら犬がいなくて出来ない時期があったり、5人がかりで1頭も獲れなくても良いが、獣害防止の役割としてみると、ちょっと効率が悪いのでは。


・この女性は狩猟免許をとり、銃を持つ段階からスタートしたが、それ以前の「狩猟に興味がある人」を取り込む方策は。

 今回取り上げられたのは、移住者の女性が狩猟に興味があった例で、地元の若い人ではない。
 「田舎に女性ハンターが来た」ということで取材の対象になりましたが、こういった例はそこかしこにあると思います。
 男性だったら話題にならないでしょうし、ローカルルールと馴染めず、銃を持たなくなってしまう人もいたのでは。

 そのあたりをスルーし、狩ガールなどとむやみに持ち上げるのは、狩猟者の減少問題の本質を見落とす可能性があります。
 狩猟免許をとったものの狩猟者登録しなかったり、出猟しなかった人や、銃を持つのを諦めた人は取材されず、情報発信もされない。
 「日本が凄い」とか「町工場が実は世界的~~を作っていた」にも通じますが、メディアに取り上げられるのは成功例です。
 成功している事例だけに注目するのは、ある意味、危険です。
 新人を育てる方策が上手くいっているのであれば、移住者ではない、地元の30代40代の狩猟者がもっといるはずでは?

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2 件のコメント:

  1. 凄っごく同感します。

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  2. そのテレビ見てました、狩猟を興味本意で趣味で入るのは、死に物狂いの命と向き合うので生るく甘いと思います。

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