2017年8月7日月曜日

特措法によるライフル所持はありえるのか

 農林水産省 鳥獣被害対策コーナー
http://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/index.html#実施隊
 被害防止計画作成市町村は1444、鳥獣被害対策実施隊設置市町村は1093あります(平成28年10月時点)

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 鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律に基づく被害防止計画の作成の推進について
http://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/pdf/h27_keikaku_ryui.pdf

被害防止計画の作成に当たっての留意事項

対象鳥獣の捕獲体制
 捕獲等を推進する上で、鳥獣被害対策実施隊員に、銃砲刀剣類所持等取締法(昭和33年法律第6号。以下「銃刀法」という。)第5条の2第4項第1号に規定する「事業に対する被害を防止するためライフル銃による獣類の捕獲を必要とする者」としてライフル銃を所持させる必要がある場合には、そのことについて記入する。

対象鳥獣の捕獲計画
 また、鳥獣被害対策実施隊員に、銃刀法第5条の2第4項第1号に規定する「事業に対する被害を防止するためライフル銃による獣類の捕獲を必要とする者」としてライフル銃を所持させて捕獲等を行う場合は、ライフル銃による捕獲等を実施する必要性及び当該鳥獣被害対策実施隊員による捕獲手段、捕獲の実施予定時期、捕獲予定場所等を記入する
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 市町村が作成する被害防止計画に、この例のようにライフル所持させる旨書いている市町村はあるのか?
 気になったので調べてみました。

 インターネットで被害防止計画を公表している自治体があります。
 「被害防止計画」検索結果
 検索上位の計画を80箇所ほど開き、文書内を「ライフル」で検索してみました。

 実施隊にライフル所持させることについて書かれているのは、9町村だけでした。
 北海道では留萌市初山別村遠別町興部町本別町陸別町北見市
 あとは山形県小国町兵庫県篠山市

 実施隊を設置している市町村は1093箇所あるので、サンプルの分母が少ないですが、約1割といったところ。
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 農水省は特措法で鳥獣被害対策実施隊を設置するメリットをうたっていますが、市町村がそれを受け、被害防止計画に記載しなければならない。

 被害防止計画に記載し、市町村長のハンコを押した書類を貰い、ようやくライフル所持許可の申請ができるが、許可が下りるかは分からない。

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警察庁丁保発第30号 平成27年1月30日
鳥獣被害対策実施隊の隊員からの事業に対する被害を防止するためのライフル銃の所持許可申請への対応について(通達)

https://www.npa.go.jp/pdc/notification/seian/hoan/hoan20150130-6.pdf
>実施隊を設置した市町村が作成した被害防止計画に、農林水産業等に係る被害の実態及び実施隊員が所持する銃器(ライフル銃)による獣類の捕獲等が行われることが定められていることを確認すること。
>被害防止計画にライフル銃による獣類の捕獲等が行われることが明示されていない場合には、当該市町村が作成した別添様式第1号「ライフル銃による捕獲を必要とする意見書」の提出を求め、ライフル銃の必要性等について確認すること。
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 実際に、特措法の鳥獣被害対策実施隊としてのライフル所持をした例はあるのだろうか?


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http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/187/0058/18710300058006a.html
第187回国会 内閣委員会 第6号
平成二十六年十月三十日(木曜日)
○尾立源幸君 是非、この辺もまだ積み残しの点でございますので、またこれは継続的に議論をしていきたいと思います。
 それでは、もう一点、農業被害の方の特措法の中で決められていることなんですけれども、ライフル銃というのは特に遠距離の鳥獣を捕獲するときにはこれ非常に有効なわけなんですけれども、今、十年以上の散弾銃の所持歴がないとライフル銃は持てないようになっております。

 これはこれで一定の理由があるわけなんですけれども、この特措法ではそれを五年に短縮できるようになっておりますが、この特措法の特例を受けた人は全国でたった二人しか今いません
 じゃ、なぜこの特例が今まで二人しか受けられなかったのか、大臣、レクは受けられましたですかね。──分からない。そうしたらいいです、私の方で言います。

 実は、散弾銃は持っている人なんですけれども、ライフル銃は十年たたないと持てないので、それを五年に縮めるためにどうするかというと、この実施隊員さんは、ライフル銃を持った場合に、各市町村の役場のどこかの部屋でそれを保管してもらわなきゃいけないんです。
 ということは、北海道だと朝四時半ぐらいにもう明るく、もっと、三時半ぐらいですかね、日の出が夏なんかはあると思うんですけれども、そうしたら、その三時半前に役所に行って、銃を取って、それから駆除に行かなきゃいけないわけなんですよ。
 そんな面倒くさいこと、誰がやりますかと。市町村の職員さんも絶対嫌なわけです、こんなことは。
 しかも、土日にやる場合も多いし、そのたびにそういう休日出勤、早朝出勤、遅くまで残るみたいな、このためだけに必要になってくるし、市役所や町役場のその保管する場所というのは別に銃砲店でも何でもありませんので、そんなに厳重に管理をされているわけではありません。ということから含めて、非常にこんなことは嫌がってきたというのが実際なんです。

 ということで、これについて改正を我々はお願いをしておるんですけれども、どのような改正方向になっていくのかということを、それではお聞かせください。

○国務大臣(山谷えり子君) 鳥獣被害対策実施隊の隊員については、有害鳥獣による事業に対する被害を防止するため、ライフル銃による獣類の捕獲を必要とする者に該当するとして、散弾銃を十年以上所持していなくてもライフル銃の所持許可を認めていますが、ライフル銃の適切な取扱いを担保するため、その保管、管理について、市町村の施設内において市町村の責任ある立場の者が施錠管理するなど厳格な監督を求めてきたところでございます。

 尾立委員が今おっしゃられたような現状の中で、これについて市町村の負担が重過ぎるという声を受けまして、ライフル銃の適切な保管、管理がなされるのであれば所持許可を受けた者の自宅で保管することを認める方向で、現在その詳細について検討しているところでございまして、年内を目途に通達を発出する予定であります。
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特措法の成立が平成19年12月21日なので、平成26年まで2人というのはどうなんだ?
絵に描いた餅でしかない。

その後、↓の通達が作られ、自宅保管になった。
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警察庁丁保発第30号
平成27年1月30日
警察庁生活安全局保安課長
https://www.npa.go.jp/pdc/notification/seian/hoan/hoan20150130-6.pdf
鳥獣被害対策実施隊の隊員からの事業に対する被害を防止するためのライフル銃の所持許可申請への対応について(通達)

 ライフル銃の保管・管理の状況の確認
 保管場所
当該ライフル銃の保管については、個人保管を原則とする。
市町村の施設において保管する場合においては、許可所持者ごとに保管設備を設置の上、当該保管設備の施錠を許可所持者自身にさせるなど許可所持者において自ら保管させること。


 ライフル銃の所持許可を受けた実施隊員は、市町村による捕獲等の出動命令があった場合又は射撃の練習若しくは修理等正当な理由のため当該ライフル銃を持ち出すことについて市町村の責任のある立場の者から承認を受けた場合に限り当該ライフル銃を持ち出すことができることとし、許可所持者において、ライフル銃の出し入れ状況を別添様式第2号「ライフル銃管理票」に記録すること。

市町村の責任ある立場の者は、出動命令又はライフル銃の持ち出しの承認状況について、別添様式第3号「出動命令簿兼持ち出し承認簿」により管理し、定期的に「ライフル銃管理票」と照らし合わせて齟齬がなければ「ライフル銃管理票」に押印をするなどして、確認すること。

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 鳥獣被害対策実施隊員として、実際に許可が下りた人は、この人ぐらいしか見つけられませんでした。
 2015年(平成27年)7月に許可のようです。
http://blog.livedoor.jp/imai_bass/archives/55624718.html

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追記:
警察庁丁保発第209号
令和2年12月22日

被害防止計画に基づく対象鳥獣の捕獲等に従事する者及び認定鳥獣捕獲等事業者の捕獲従事者からの事業に対する被害を防止するためのライフル銃の所持許可申請への対応について(通達)

こちらの通達で手続きについて整理されたようです。


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