2017年8月3日木曜日

ワックススラッグの法的な扱いについて

 ワックススラッグや、弾頭の差し替えは、法的にはどういった解釈になるのか調べてみました。
注意:
 法律や通達については、あくまで筆者の解釈であり、運用にあたってはすべて自己責任となります。
 この記事を見ての行動については、一切の責任を持ちません。

 火薬類取締法
 火薬類取締法 施行令
 火薬類取締法 施行規則

 法的な解釈は消費・廃棄・変形(製造)の3パターンに分かれると思います。
 これらの法律等には「分解」という単語はありません。
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(1)消費
 火薬類取締法 第二十五条 (消費)
 火薬類取締法 施行規則 第四十九条(無許可消費数量)

 これに当てはまる場合については、全く問題がありません。
 通常の標的射撃、有害鳥獣駆除や狩猟、そのための練習と同じように消費できます。

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(2)廃棄
 火薬類取締法 第二十七条(廃棄)
 火薬類取締法 施行規則 第十章 廃棄

 弾頭に加工したとしても、最終的に発射して実包(火薬)を消費するのであれば、廃棄ではないと思います。
 仮に散弾の鉛粒やスラッグ弾頭を抜き、火薬とワッズだけにしたのち発射すれば、ただの消費になるのではないでしょうか。

 こちらの通達に定義があります。
 警察庁 平成27年6月4日 丁保発第123号 猟銃用火薬類等の取扱いについて
https://www.npa.go.jp/pdc/notification/seian/hoan/hoan20150604.pdf
>消費
>廃棄以外の目的でする火薬類の爆発又は燃焼をいう。
>その爆発又は燃焼の効力を有効に利用すると否とを問わない。

実包の火薬を集めて違うことに使うのは製造になり、火薬を爆発又は燃焼せずに廃棄するのは法的にはアウトになりそうです。
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(3)変形
産業構造審議会 保安分科会 火薬小委員会 産業火薬保安ワーキンググループ(第5回)・煙火保安ワーキンググループ(第5回)合同開催‐配布資料
http://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/hoan/kayaku/sangyo_kayaku_wg/005_haifu.html

火薬類の技術基準等の見直しについて(討議資料)
-リスクの大きさに応じた規制の実現-
②製造・消費の範囲、無許可製造
平成27年5月27日 鉱山・火薬類監理官付

A.火薬類取締法における「製造」の定義と運用の実態
火薬類取締法は、火薬類(火薬、爆薬、火工品)の製造について「製造(変形又は修理を含む。)」と定めている。
運用では製造行為を以下のとおり「狭義の製造」、「変形」、「修理」に区分している。

○狭義の製造(変形又は修理を除く)
物理的、化学的な物質の変化を通じて火薬類をつくり出すこと(例:TNTの合成)
火薬類でない物質から火薬類を作り出すこと(例:黒色火薬の調合)
火薬類である物質から他の火薬類をつくり出すこと(例:爆薬から雷管の製造)

○変形
火薬類の実質に変化を加えない加工(例:爆薬の分割・合体・成形)
ただし、消費場所において行われ、変形後ただちに消費される場合は消費行為とみなす。

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 花火のラベル付けや、発炎筒を縛るのは「変形」に含まれるか?といった議論をしています。
 手を加えること自体がいかん、と言われると、スラッグにグリスを塗るのも加工になってしまいそうな…
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http://www.pref.iwate.jp/anzenanshin/bosai/kayaku/002519.html
岩手県 火薬類取締法の火薬類の製造について

>火薬類取締法における火薬類の「製造」とは、火薬類でない物質から火薬類を作り出すことはもちろん、すでに火薬類である物質から他の火薬類をつくり出すこと、火工品(火薬又は爆薬を使用して、ある目的に適するように加工し製造したもの)を変形することも含まれます。

>このため、がん具煙火を分解して火薬を取り出す行為、複数のがん具煙火を連結する行為等も火薬類の製造となります。これらの行為は、危険を伴うだけではなく、火薬類の製造行為となるため、許可を受けた者でなければ、行うことができません。

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 弾頭への加工は、火工品である実包の変形と解釈できそうです。

 火薬類取締法
(製造の許可)
第三条  火薬類の製造(変形又は修理を含む。以下同じ。)の業を営もうとする者は、製造所ごとに、経済産業省令で定めるところにより、経済産業大臣の許可を受けなければならない。

 ここでは、製造には変形又は修理を含むとあります。
 
 花火や救命信号では上記の委員会のように変形=製造が問題になりますが、狩猟や有害鳥獣駆除のための実包であれば、無許可製造という仕組みがあります。
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 火薬類取締法 第四条で製造の規制。但し書きで一部例外。
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 火薬類取締法 施行規則
無許可製造数量
第三条  法第四条 但書の規定により許可を受けないで製造することができる火薬類の数量は、左の各号によるものとする。

三  法第十七条第一項第三号 に規定する者が鳥獣の捕獲または駆除の用に供するために製造する場合には、一日につき実包または空包百個以下

四  射的練習の用に供するために当該練習者が製造する場合には、一日につき実包または空包百個以下

五  鳥獣の駆逐の用に供するために製造する場合には、一日につき空包百個以下
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 つまり、実包を変形(製造)したとしても、1日100個以内であれば、通常のリロードによる実包製作と同じ扱いになるのでは。
 どうでしょうか。


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 2019年11月11日追記
https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=595119118&Mode=0
パブリックコメント
火薬類取締法施行規則の一部を改正する省令に対する意見公募について
案件番号 595119118

(1)オリンピック競技大会の課題への対処

 国際ルールの改正を踏まえ、現在、射撃競技においては、審判に従事する者が実包を分解し、不正がないかを検査することとなっており、2020年に開催が予定されているオリンピック競技大会においてもこの検査が行われることとなっています。

 当該行為は、火薬類取締法における製造行為に該当するものですが、取り扱いについて検討したところ、国際的又は全国的な規模で開催される運動競技会において、審判に従事する者が当該行為を行う場合であれば、十分な安全管理体制が構築されていると考えられることから、運動競技会を円滑に開催するために、1日につき実包200個以下に限り、火薬類取締法の製造許可を不要とする改正を検討しております。

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