2018年2月23日金曜日

神奈川県のワイルドライフレンジャーのライフル所持問題

 スタート時は3名、その後追加して5名体制になりました。
 忍び猟などで奥山や高山帯の鹿を捕獲していますが、10年未満でライフルが所持できないようです。
 「10年未満でライフルを所持する方法」という記事をまとめましたが、どこか良い落とし所はなかったのだろうか。
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 平成27年 地方分権改革に関する提案募集 提案事項
http://www.cao.go.jp/bunken-suishin/doc/tb_27_kohyou_03_1_npa.pdf
 県との派遣委託契約に基づく派遣労働者であるワイルドライフレンジャーは、県の指揮命令下に置かれて捕獲を実施しているが、それが県自らによる捕獲ではないという理由により、「事業に対する被害を防止するためライフル銃による獣類の捕獲を必要とする者」に該当しない。

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警察庁 平成27年の地方からの提案等に関する対応方針に対するフォローアップ状況
http://www.cao.go.jp/bunken-suishin/doc/tb_h27fu_03_npa_b.pdf
 このうち、「事業に対する被害を防止するためにライフル銃による獣類の捕獲を必要とする者」とは、例えば、農林水産業を営み又はこれに従事する者で、当該事業に対する熊、イノシシその他の獣類による被害があり、これを防止することが必要であると認められるものをいうのが原則であるが、

① 鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律(平成19年法律第134号)第9条に基づき、市町村が実施隊を設置してその隊員に猟銃を所持させ鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(平成14年法律第88号。以下「鳥獣保護管理法」という。)第9条第1項の規定に基づく許可を受けて行う鳥獣の捕獲等に従事させる場合

② 鳥獣保護管理法第18条の2に基づき認定を受けた鳥獣捕獲等事業者がその捕獲従事者に猟銃を所持させ、同法第7条の2に規定する第二種特定鳥獣管理計画が定められている区域において、当該区域内の農林水産業に従事する者又は都道府県、市町村若しくは農業協同組合等の農林水産業に関する法人から農林水産業に係る被害を防止するために委託を受け、又は同法第14条の2第7項に基づき指定管理鳥獣捕獲等事業の委託を受けて鳥獣の捕獲等に従事させる場合であって、ライフル銃を所持させた上で捕獲等に従事させる必要があると認められ、一定の厳格なライフル銃の保管・管理が確保されている場合には、上記の場合と同様にライフル銃を必要とし、かつ、適切な取扱いを期待できる
ことから、「事業に対する被害を防止するためにライフル銃による獣類の捕獲を必要とする者」に該当するとしているところである。

 ワイルドライフレンジャーについては、上記①、②のいずれにも該当せず、「事業に対する被害を防止するためにライフル銃による獣類の捕獲を必要とする者」には該当しない。

 また、本件の鳥獣の捕獲等については、派遣委託により行われるところ、県が直接雇用又は業務委託により捕獲事業を実施する場合に比べて責任の所在が不明確になる(労災補償責任は派遣元が負い、損害賠償責任は県が負うこととなるなど)おそれもあり、農林水産業を自ら営む者と同様にライフル銃を真に必要とし、かつ、所持を認めても危険性が少ないとは認められない。

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警察庁 最終的な調整結果
http://www.cao.go.jp/bunken-suishin/doc/tb_27_ichiran3_03_npa.pdf

基本的に同じ文章での回答です。

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 高山帯や奥山では見回りに行くのが難しいため、罠での捕獲は困難です。
 銃を使った捕獲になりますが、少人数、高山帯、伐採造林地などでは、ライフルが有効な手段になります。
(関連記事:日本の広い造林地での狩猟動画


 それでは、どんな方法ならレンジャーがライフルを持てたのだろうか。

(1)丹沢地域の町の鳥獣捕獲実施隊に名前を入れてもらう。
 県主導のレンジャーですが、実施隊は市町村の被害防止計画に基づくものなので、町役場に権限があります。
 複数の町に跨って登録した場合、どの町からの同意をもってライフル許可の申請をするのかややこしくなりそうです。
 仮に許可が下りたとしても、町ごとにライフルの出し入れ簿を作り、実施隊としての弾の管理も別になるかもしれない。


(2)認定鳥獣捕獲等事業者の人がレンジャーになる
 レンジャーの応募条件が分かりませんが、この限定条件の募集は可能か?


(3)県の正規職員として農林水産課付けで雇用し、県有林事業に対する被害防止を理由にする
>農林水産業等を営み、又はこれに従事する者であって、獣類による被害を受け、又は受けるおそれがあるもので、その被害を防止するためライフル銃による獣類の捕獲を必要とするもの
>当該区域内の農林水産業に従事する者又は都道府県、市町村若しくは農業協同組合等の農林水産業に関する法人から農林水産業に係る被害を防止するために委託を受け

 場所が県有林限定になってしまうかも?


(4)獣類の捕獲を職業とする者
 捕獲を職業としているので、これに該当するかも?
 これについても、委託というのが引っかかる可能性があります。

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 鳥獣捕獲実施隊が町単位というのには、広い地域の鹿管理からすると、ちょっと無理があります。
 県単位の制度にならないものでしょうか?

 県庁が正規職員として雇用し、経験と知識を積みながら技術職として10年目を迎え、その経験をもって後輩を育てるのが理想なのでは。

 10年未満のライフル所持には色々なパターンがありますが、それぞれにハードルがあります。

 趣味の狩猟者や有害鳥獣駆除も鳥獣管理の1つの手段ですが、専門職を公的に育てる必要もあると思います。
 環境調査や鳥獣被害コンサル会社の専門職や、認定鳥獣捕獲等事業者というパターンもありますが、雇用や事業の継続性が安定していませんし、あくまで委託になります。

 ドイツやイギリスの公務員である森林官は、ライフルを持って、鹿の管理をしています。
 そういった公的なハンター(鳥獣管理を職業とする人)が日本に100人ぐらいいてもいいのでは。

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 法律を作る国、実施主体の県や町、実際に動く銃所持者、銃を規制したい警察庁、鳥獣管理の専門家など、色々な立場の人がいます。
 そういった仕事として鳥獣に関わっている人がいても、このような事態に至ったわけです。

 偏見も入りますが、公務員の人は異動があるので専門性はそれほど深くなく、他の町のことについて知らない場合もあります。
 研究者や専門家にしても、学問としての知識はあっても、法律についてはどこまで知っているのか。
 それぞれの立場で情報交換せず、足りない部分を補わない結果がこれなのでは。

 通達や法律について、もっとオープンに議論する場や、発言する人がいても良いのでは。
 このブログは一個人の私見にすぎませんが、議論のきっかけになればと思います。

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