2019年5月23日木曜日

本:狩猟家族


 ニュージーランドにワーキングホリデーで働きに行った青年と、牧場での交流。
 田舎暮らし、狩猟、猟犬、老いなど色々なテーマが入っていますが、狩猟がそれなりに中心となっています。
 小口径ライフルの22LRでいかに大きな鹿を仕留めるかという話題もあります。
 著者はニュージーランド在住のようで、アウトドアや狩猟との距離が近いのかも。

Youtube「new zealand deer hunting」検索結果

 以前、北海道に住んでいた時、酪農をしている家と交流がありました。
 そういった予備知識があったから、より臨場感をもって読めたのかもしれない。

 以下、気になった点をメモ。おおむね肯定的です。
 狩猟をテーマにした、読んで損は無い本としておすすめできます。

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P106
> すっかりハンティングにはまってしまった遼平は、日本でも続けたくなったらどうしようかと悩んだ。
>無職では銃刀所持許可の申請が通ることなど、まずありえないだろう。


 年金暮らしのご老人も職業は無職ですし、学生で銃を持っている人もいます。
 インターネットが使える時代の設定なのだから、「まずありえない」と断定するのは、主人公の考えが浅く感じてしまう。


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P175
 ペットと猟犬では処分の方法が違う?

 犬についても大きなテーマとなっています。
 猟犬は家に入れないなど、国や地域、著者の主観が入った展開になりますが、興味深い展開でした。


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P193
>ハンティングの好きなところは、撃つ前の、狙いが定まるのを舞っている間かな。無心になれる。
>獲物を追っているときも、待っている時も。
>余計なことを考えなくてすむ。
>寒さも気にならないほど、集中できる。
>サンドフライには、なかなか慣れないけども。


 自分の場合、緊張もあって無心になるというより、実際は一瞬だが、時間が長く感じられるような感じです。
 獲物との遭遇距離が違い散弾銃と、ライフルの違いかもしれない。

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P194 仏教徒なのに動物を殺していいのか。

 多くの日本人はどこかのお寺の檀家や神社の氏子に属しているが、そういう制度はずいぶんと前から崩れている。
 遼平のように自分の家の宗派も把握しておらず、そもそも仏教徒なのかと訊かれるまで、考えもしないのが普通だ。
 ニュージーランドのように、小学生から聖書を勉強するように経典を学ぶ機会も無い。
 そしてお寺や住職とは、葬式や法要ぐらいでしか接点がない。
 とはいえ、仏教はその長い歴史的背景から、日本人の道徳観や社会規範に、深い影響を与えている。

 不殺生という決まりは、確かに仏教にはあるんだけど、人間はもちろん、動物も虫もやたらに殺しちゃいけない、ってもの程度のもので、そんなに厳格なものじゃない。
 その一方で、自分が殺すだけじゃなくて、自分が食べたり得をするために、他人に頼んで殺してもらうのも、やはり殺生という罪は犯したことになる。

 日本にはあと仏教の他に神道というのがあって、死を「穢れ」として嫌う。
 この観念と仏教の不殺生が混ざって、屠畜や捕殺に過敏な反応を示すひとは多いかもしれない。
 僕も、初めは動物を撃ったり殺したりするのに、抵抗や罪悪感があった。
 神道を実践したり、仏教を学んだりしたりしたこともないのに、僕も含めて誰もが、なんとなく死に対して穢れや罪を無意識に抱えているから、始末が悪い。

 以前、サマーがハンターになって殺生をしたら、仏教徒になれないのか、って訊いたから、そんなことはないって言っておきたかった。
 お坊さんだって、修行中でなければ肉を食べる。
 つまり不殺生を犯しているってことだから、一般人まで破門されたり、入門を拒否されたりする心配は要らない。
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 ↑引用ここまで。
 比較的、日本人に受け入れやすい殺生感かと思う。
 世の中にあふれているグルメ番組、大食い番組などと、生き物の生死がかけ離れている。
 スーパーで100グラム88円で売っている豚肉を見ると、産んで育てて屠殺し、解体、流通まで手間がかかって88円か、という気分になる。


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P204
>ライフルで遠くから撃ち殺せるから、射撃による狩猟を単なる殺戮とする見方もあるが、野生獣の狩りは、運と駆け引きと忍耐のスポーツだ。
> 未明から日没まで荒野や山岳を歩き回っても、獲物の群れに出会わないときもあれば、せっかく見つけても、こちらの注意が足りなければ1キロメートル以上も先から勘付かれ、補足する前に逃げられてしまうこともある。
>そしてライフルは、砂礫で滑りやすい急斜面や足元の見えにくい森を、一日中背負って歩き回るには決して軽くはない。
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 これも銃猟を実際にやってみると分かる。
 一日歩いて一頭も見なかったり、見てもすぐに逃げられたりなんてこともある。


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