2019年5月11日土曜日

本:みかんとひよどり


 狩猟やジビエをテーマにした小説。
 流れは良く、軽い小説として読めるが、全体的に薄味。


 しかし、展開や細かい点で、気になる部分がある。
 例えばゴジラが出てくるような大きなフィクションは気にしないが、細かい部分が気になる性質。
 自衛隊員役が銃の扱いが間違っていたら、一気にリアリティが無くなる。
 狩猟者視点で気になった部分など。


P9 > 半年間、研修をうけて免許を取得し、猟友会の人からもいろいろ教わったが、ひとりで山に入るのは、まだ早すぎたのだろう。

P17 > 今まで、ヒヨドリと鳩しか撃ったことがなかった。どちらも山奥というより、比較的開けたばしょにいるから、山を歩く準備も訓練も足りていなかった。

 物語の最初で遭難するシーン。
 スマホがあるのに地図アプリは入れないのか?
 ビバーク装備や知識、火をおこすものも無し?
 ヘッドライトは非常食もなし。
 狩猟の知識というか、アウトドアの知識が無さすぎでは。
 そもそも「半年間の研修」というのが謎。



P15 >「どうだっていい。たまにに荷台に載りきらないときは、助手席に獲物をのせることもある。」

 遭難した主人公を助ける猟師の言葉。
 車はデッキバン。
 デッキバンを所有しているので分かりますが、荷台が一杯だったら、後部座席を畳んでそこに載せるのが普通では。
 後部座席に犬を乗せるにしても、助手席はありえない。
 荷台には本州の鹿であれば、、4頭ぐらい積めると思います。
 というか、そこまで積む可能性のある職業猟師だったら、デッキバンではなく軽トラにすると思う。



P23 > 取り外した足を氷で冷やす。
 猟期の話なので11月ぐらいだろうか。
 鹿の足はそれなりに大きいので、氷で冷やすのがイメージしにくい。
 電解水やアルコールで拭き、そのままか布で包んで冷蔵なのでは。
 設備の少ない自分で作った解体場で、氷を準備するのは、ちょっと考えにくい。



P30 クレート
 たびたび出てくる単語。
 犬を置くトレーのようだが、一般的に知られている言葉ではないのでは。


P47 >「じゃあ、なんで日本の猪や鹿じゃダメなの?」
 「どうもうまく使えないんですよ。鹿は淡白すぎるし、猪はあまりにも脂が多すぎて。ヤマシギやヒヨドリた、野兎などが手に入ればいいんですけど……」

 職業シェフとしてそのスタンスはどうなんだ?
 それをうまく使うのがシェフだろうに。
 P177~178で料理法を想像するシーンと整合性がとれない。


P56 >鳥獣保護区でも狩猟をしていいという許可がもらえるとは知らなかった。たしかに畑が違いと農作物の被害もあるはずだ。

 鳥獣保護区での有害駆除について
 そんなことも知らないで狩猟をやっているのか…


P81 >俺の留守の間に火が出た
P82 >猟銃は買った店に預かってもらっている。
P102 >彼が獲ってくる野禽は、どれもエアライフルで仕留められている。だが、彼は散弾銃ももっているはずだ。最初に会った日、彼が下げていたのは散弾銃だった。


 どんな状況で留守にしていたのか分かりませんが、猟師は散弾銃と空気銃を持っている設定。
 狩猟に行っていたのなら、どちらかは燃えてしまったということ?
 2丁同時に持っていくことは、まずありえない。
 それについて、何も触れられていない。


P144>山に入り、獣道のようになっているところを歩いていく。急斜面を歩くのは、想像以上に体力がいる。五分も経たずに息が切れ始める。
  >確かに、もう長いこと運動らしい運動はしていない。せめて、もっと歩くようにしなければならない。

 罠の見回りの同行。
 回収や見回りの関係で、一般的に罠は車から近い場所にかけることが多い。
 主人公の体力の無さを描く意味もあるのだろうが、よくそれで単独猟に行こうと思ったな。



P173 >大高が履いているのは冬用の登山靴だが、ぼくは普通の登山靴だ。まだ積もったばかりで凍結していないから歩くことは出来るが、日ごく冷える。保温性はほとんど無い。

 準備不足もあるのだろうが、それぐらいで濡れるような靴を履いて、よく狩猟をしようと思ったな。そりゃ遭難するわ。



P176>子鹿だと大高は言ったが、かなり重い。六十キロぐらいはあるのではないだろうか。

 本州の鹿の場合、60キロもあれば成獣。
 子鹿は30キロぐらいでは。


P233 >「何頭も殺した。何羽も殺した。俺がとどめを刺した。この前の小さな美しいしかもだ。俺には安全圏にいる資格なんかない。俺の手は血で汚れている」

 家の放火に対して、何らかのアクションを起こそうとしている猟師。
 それを止める主人公というシーン。
 この猟師の心情が、いまいち分かりません。
 動物に対してと、人間に対してはちょっと違うのでは。


P261 >原山氏の銃の盗難も、一美が実家に帰ったときに、ガンロッカーの合い鍵を作ったらしい。

 合い鍵の管理が杜撰すぎるのでは。
 自分の場合、家族でも探しにくい場所に鍵を隠しています。
 バールでこじ開けるのならともかく、鍵を探し、合い鍵を作り、元の鍵を返すのは容易ではない。
 合い鍵を作る際に、足が付かないか?
 



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