2019年1月21日月曜日

くらげバンチ「クマ撃ちの女」

 ウェブ上で、狩猟をテーマにした漫画連載がスタートしました
https://kuragebunch.com/episode/10834108156642874621
 大まかなストーリーは良いですが、細かい描写が気になります。
 人間関係や設定で読ませるタイプの作品ではないのだから、物の描写をしっかりして欲しいです。
 狩猟をテーマにしているからといって、盲目的にありがたがるのは違うと思うので、細部に突っ込んでみます。
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・クマが蕗(フキ)を食べているが、猟期が1ヶ月過ぎた冬には蕗は枯れているのでは。
 「ヒグマ猟は出来る期間は実質年に二ヶ月ちょっと、もう一ヶ月過ぎます。」というセリフがあります。
 これは、猟期開始から冬眠するまでの約2ヶ月だと思われます。
 自然相手の季節を述べている一方で、春のフキを描写するのは整合性がとれない。

・1話目の表紙の先台についているスイベルに、スリングがどう付いているのか分かりにくい。
 左手を見せるための省略かもしれないが、違和感があります。

・1話目3ページ目の銃を前に持って歩いているシーン。
 あの角度だと、右手がかなり厳しいです。
 すぐに疲れると思う。
 銃の重さを感じる作画をして欲しい。

・糞、足跡、蕗を食べた跡、ヒグマの姿を見てから装填するが、タイミングが遅すぎないか?
 単独猟でヒグマを狙うのなら、もうちょっと早く装填するのでは。

・記者にエゾシカの解体を手伝わせますが、足元はクロックスだし、手を洗わせるのにゴム手袋をしていません。
 ちょっと前には、レバーを生で食べるのはE型肝炎が心配と言っているのに?

・鹿の解体シーンで、皮が剥かれた頭部が出てきます。
 運搬を軽くするため、現地で内蔵をだし、吊るした段階で毛皮がついています。
 それなら、頭は皮を剥かずに、そのまま切り落とすのが普通なのでは。

・10年も狩猟をやっている人が、家での解体にフォールディングナイフを使うか?

 狩猟に触れたことが無い人に、解体を教えたことがあります。
 吊るし解体で押さえてもらうと、回転せずに、確かにやりやすい。

 クレーンがあるのなら、皮を固定し、機械で引っ張って皮剥ぎしてみては。
 もしくは、記者に皮を引っ張ってもらい、主人公がナイフを使うとか。
 いきなりナイフを持たせるのはちょっと怖いし、皮を剥ぎ終えると、動物を殺しているという忌避感が薄れ、食用としての肉っぽくなります。

 車の荷台にペットシーツを敷き、そこに肉を置くのは良い。
 家で解体した場合、残滓をどうするのか?
 家の立地や職業なども含め、矛盾が無いように描いて欲しい。


・2話目の車のサイズ感がおかしい。
 軽トラと見間違えましたが、1話目最後で2シーターのピックアップトラックと分かります。
 トヨタ ランドクルーザーの シングルキャブっぽい。
 それにしても大きい。

・2話目でタンクトップになっているのは室内だから良いとして、1話目の車内でもタンクトップは季節的におかしくないか?
 記者はフードにファーがついた冬用ジャケットを着ている。
 アニメのキャラの私服がいつも同じなのは、動画作成が大変だし、視聴者もそういうものだと知っている前提で見ている。
 しかし、現実世界を描いているのなら、もうちょっと気をつけていいのでは。
 北海道の11月1日の気温の例
 人に合う時間を18時とすると、比較的暖かい函館でも9度苫小牧では8度です。
 さすがにタンクトップは無いのでは。


・リアリティの追求としては、100kgの仕留めたエゾシカをどうやって回収したのか。
 車にはクレーンがついていますが、それだけで回収できるものか?
 北海道に住んでいた時、単独猟でエゾシカを撃ったことがありますが、とても一人で引っ張れる重さでは無かったです。

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色々と気になりますが、基本的には応援しています。
 指トリガー警察や○○警察のように、むやみに指摘して非難する意図はありません。

 ライフルの口径の選択や、どうして狩猟をはじめたか、普段の仕事はなど、掘り下げる箇所は多いです。

 現実世界を描いているからこそ、小物は実際にあるものを描いて欲しいし、季節や植生、動物の行動なども矛盾が無いようにして欲しい。

 自然や動物を描くのなら、季節や道具に気を配ったほうが、より没入感が得られるし、その描写が雑だと、「何でもありの世界観か」と冷めます。

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 SF世界、もしくが現実世界が舞台であっても超能力ものであれば、細かいことは言いません。
 ガンダムで重いドムがホバー走行しているのは、ミノフスキー粒子のある世界だから。
 スターウォーズで真空中で音が聞こえても、そういう設定だから。
 アニメで登場人物が同じ服なのも、作画が大変だからという設定を、視聴者も分かっている前提で見ている。

 しかし、現実世界ベースの作品では、物や設定を甘く描写すると、とたんにリアリティが失われていきます。
 弱虫ペダルやデカスロンのように、誇張した描写は良い。
 それにしても、ある程度連載が進んで、読者が受け入れられる準備が出来てから。

 サザエさんやドラえもん的世界で、年を取らないのもいい。
 あれはディフォルメされたキャラクターであり、イベントや人物関係を描くのが主体で、道具のディティールや人物像の掘り下げ、年を重ねる描写は求められていない。
 それにしても、冬は波平さんはコートを着ているし、ちびまる子ちゃんはセーターを着ていたと思う。

 現実ベースの漫画では、小道具もちゃんと描写している印象があります。
 例えば、登山の「」「ゆるキャン△」、医療の「ブラックジャックによろしく」など。
 専門家が見れば細かい突っ込みどころはあるかもしれませんが、パッと見は分からない。

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 自然・動物をテーマにした漫画には、このあたりを気をつけて欲しい。

 自然:季節の設定や植生に矛盾が無い。

 ゴールデンカムイのような1枚の風景画は、ディフォルメされた漫画ではちょっと馴染まない場合もある。
 そもそもゴールデンカムイは明治の北海道を舞台にしているが、マクガフィンを探す話であって、リアリティは求めていない。

 動物:大きく見える誇張やディフォルメは良いとして、骨格的にちゃんとしているか。
 道具:実際にある道具を出す。

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 このあたりの背景をどう描くのか期待。

・20歳でなぜ銃を所持しようと思ったのか
・家族や周囲の反対は
・出身地や育った環境
・大学に行っている間に免許を取ったのか。
 学部や周りの反応は
・主となる職業と現在の居住環境
・ライフルの種類や口径をどう選んだか
・ヒグマを狙うようになるキッカケ
・狩猟以外の趣味は

 狩猟のみを描写した結果、話の展開が狭まってしまったのが「東京カリニク鉄砲隊」だったのでは。
 どう考えて装備を選んだのかや、登場人物の日常生活なども描かないと、キャラクターや物語に奥行きが生まれません。
 海外の含め、狩猟動画が気軽にyoutubeで見られる時代に、マンガでしか表現できないことは何か。
 Youtube「bear hunting」検索結果



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1 件のコメント:

  1. どうも。
    【狙って】射撃・狩猟のメモ帳【撃つだけ】http://3697000spg3.blog.fc2.com/
    の管理人です。

    確かにフキのシーンや銃の手首、装填タイミングと解体時の首を切断しないあたりが不自然ですね。そのあたりは漫画に突貫工事感がありますね。
    とりあえず今後に期待です。

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