2017年2月8日水曜日

森林更新の難しさ

 鹿の生息密度が高い地域です。
 新たに苗木を植えても、すぐに鹿の食害を受けてしまいます。

 苗木ごとに行う単木防除の例
 ヘキサチューブ(ハイトチューブ)
実施直後の様子。卒塔婆みたいと揶揄されることもある。
 北関東で、周囲はカラマツ。


森林調査簿上ではヒノキ17年生だが、周りはススキ原になっている。
 ヘクタールあたり3000本植栽の場合、苗木の間隔は1.8m
 かろうじて生き残っていたとしても、木材がとれるような成長はしていない。


13年生ヒノキ
 食べられて矮化しているものもある。
 うまく育っているものはチューブを外していないので窮屈そう。
 鹿密度が高い場合は、チューブを外したら皮を齧られるリスクもある。


林道下の法面に植えた苗木に、「くわんたい」という網をかぶせたもの。
 とりあえず生きているが、網から出た芽は食べられ、成長は止まっているように見える。

 苗木の先につけるクリップを日本に導入している例がありますが、大面積でうまくいったとは聞こえてきません。
 海外サイトへのリンク

 生態系の研究者さんに聞いたことがありますが、周囲に鹿の嫌いな植物を周りに植えても、食害は減らないそうです。
 いわゆる忌避植物は餌資源としての優先順位が低いだけであって、嫌がっているわけではなく、防除効果は少ないとか。
 苗木につけるクリップにしても、鹿からしてみると食べにくいだけであって、周囲に餌が少ない状況であれば、食害を受けるでしょう。

 単木防除の場合、うまく成長した場合、チューブや網を外すのだろうが、外したとたんに樹皮を食われてしまうのでは?
 結局、鹿の生息密度を下げないと、更新は難しい。

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 柵による防除例
金網柵で、防除できている例。
 柵の外には獣道があり、鹿の嫌いなミツマタの花が咲いている。
 下層植生も異なっている。

鹿の侵入のない金網柵でも、下刈などをしないと、ススキ原になってしまった例。
 これは獣害ではなく、造林的な手入れの問題。

穴が空いた繊維ネット
 こういった穴があちこち空いていれば、鹿柵の意味は全く無い。
 金属ワイヤーを編みこんである繊維ネットであっても、鹿は噛み切る。

 穴があき、地面との間に隙間ができ、獣道がついている。

 噛み切られたワイヤー入りの繊維ネット
 銀色が金属ワイヤー。

ワイヤー入りの繊維ネットだが、一部の網が破られ、柵内の苗木が食べられて無くなり、芝生になっている。(柵の中から撮った写真)
 コストをかけて植えなおす前に、この鹿柵を利用して、自動で降りるゲートと組み合わせて、囲い罠にし、生息密度を下げてみるのはどうだろうか?


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遠めには成林していても、近くで見てみると剥皮被害がある例。
 太い部分の材(一番玉)の品質が下がるため、木材生産林としての価値は下がります。
 木の右側になんとなく獣道が見える。

 林内に生えた広葉樹の被害。
 周囲の針葉樹にも被害があるのが分かります。

 林業被害は計算しにくく、報告していないこともあるため、被害統計の数字に表れてこないことがあります。
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 苗木の被害、剥皮被害が減るためには、鹿の個体数を1平方キロあたり何頭まで下げればよいのだろうか?
https://www.env.go.jp/press/files/jp/13307.pdf

> シカの密度と被害水準や生態系へのインパクトとの関係については,今のところ明確な基準はない。
> これまでのところ,非積雪期の密度で,農林業被害があまり大きくならない密度は平均値で1~2頭/k ㎡,自然植生にあまり目立った影響がでない密度は平均値で3~5頭/k ㎡以下と言われている
> 保護管理計画を実行していく中で,これらの密度と環境・被害との関係については分析を進めていかなければならないが,当面はこの数値を目安とする。
>鳥獣保護区や自然公園地域内での密度も3~5頭/k ㎡以下に設定することが望ましい。
> なお,越冬地についてはこの数値は適用できない。必要な場合は調査に基づき,個別に密度水準を設定する。


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