2018年2月27日火曜日

箱根山地のシカ問題シンポジウムに参加

 2018年2月24日にシンポジウム「箱根山地シカ問題の解決にむけて-丹沢・箱根山地から見えてきたもの-」に参加してきました。
 主催は「小田原 山盛の会
 配布資料はこちら

 箱根には10数年前には鹿はいなかった。
 100年間いなかった。

 春先のやわらかい草を食べると、団子状の糞になる。

・シカの痕跡跡調査
 GPS付きカメラで食痕、樹皮食い、枝折り、角研ぎ、矮性化、ディアライン、ヌタ場、糞を記録し、地図に表示する。
(画像ファイルのジオタグ)
 角研ぎとヌタ場はオスの分布とする。

・シカの胃内容物調査
 果実としてキウイ、カキ、ミカンが出てきたのはちょっと意外。
 別の資料ではクリ、デコポン、カリンも食べられている。

・アオキの食害を鹿の増加の指標にする。
 アオキや鹿が増加してくる初期に食害される。
 その後にスギヒノキ、ササ類、スズタケなど。
 どれも冬場の餌の少ない時期に食べられる。
 丹沢では既にスズタケが無くなっている(伊豆も)

・乾物消化率と粗蛋白質含有量からみた厳寒期の採食植物の栄養価のグラフ
 ヒノキ・スギは蛋白質が少なく、消化率は中ぐらい
 草本類は蛋白質が多く、消化率も高く、餌として優れている
(冬には無くなるが、アオキは冬もある)
 ササ類は蛋白質は中ぐらいだが、消化率は悪い。

 鹿はかつて平地に住んでいたが、畑の拡大などにより、山に追いやられた。
 鹿は食性の幅が広く、何でも食べる
(北海道の洞爺湖の中島では、密度が高すぎて落ち葉すら食べている)

・近年の温暖化で豪雪による餓死が減ったのも、鹿が増えている原因では。
 丹沢では1983年に、積雪での大量死があった。

(別途資料より)
 採食圧により矮性化している低木類はdwarf(ドワーフ)というのか。
 確かに、背の低い盆栽化した木を表現するのにピッタリ。
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・神奈川県の報告
 東丹沢の堂平では根がむき出しになり、土壌流出が起きていたが、鹿捕獲により、植生回復がしてきた。
 箱根の鹿の捕獲数は平成26年頃から増えている。
 事業として捕獲を後押ししているのもあるので、捕獲数=地域の個体数が増えている訳ではない。
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・静岡県の報告
 まずは鹿の基本的な生態について。
 一夫多妻・乱婚型で、増加を抑えるにはオスよりメスの数が重要。
 オスとメスは別の群れを形成

 鹿は5~6月頃に子供を産み、母娘で行動する。
 次の年の娘も加わった3頭グループにもなる。
 栄養状態がよければ、2歳で妊娠する。
 全国的な平均では、増加率は1.2倍。
 1.2xxと電卓で計算すれば分かるが、4年で2倍になる。

 GPS首輪で分かったこと
 伊豆ではメスは季節移動しない。
 95%範囲は55haで、50%範囲のコアエリアは8haしかない。
 皆伐地・牧草地などで餌を食べ、林内で休む。
 餌が少ない冬でも、そのエリアから移動せず、エリア内の餌を食べ歩く。

 富士山地域では季節移動がある。
 西側では冬は垂直移動、東側では南に移動する。

 南アルプスでのオスの季節移動。
 夏場はオスグループで移動し、秋はメスのいる地域に移動してくる。

 メスは母娘で動くが、餌場を継承するのでは。
 良い餌場(新植地)などは鹿密度が高くなり、被害も増える。
 違うグループでは餌場は隣接するが、重複しない。
 パッチ状に行動圏が形成され、鹿密度が高くなると、開いているパッチを埋める。

 狩猟圧などかかると、違う地域に移動し、そこで定着することもある。
 尾根沿いにいた群れが里に下り、そこに留まった例もあった。
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・野生生物保護管理事務所の報告
 芦ノ湖周辺は、丹沢からの侵入で北側、伊豆からの侵入で南西側に影響が出つつある。
 仙石原湿原にも食痕や休息場があり、こんどフェンスを張ることになった。
 水路は侵入されやすいので注意が必要。

 ゴルフ場が4つあるが、柵をしていない場所に鹿がついている。
 芝捨て場が餌場となっている可能性も。

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・総合討論
 青少年の家は撤去したが、人の気配がなくなると、すぐに鹿が侵入してくる。
 (トレイルカメラの映像から)
 新しい物に対しては警戒心が少ない幼獣が近づく。
 娘が罠にかかり、母が逃げてスマートディアになるのでは。

 岩塩も設置してみたが、警戒されて利用しなかった。

 新植地が餌場となるが、その対策は。
 →柵で囲うべきだが、予算はあるのか。水源税?

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 カラー版の報告書は、寄付1000円で配布していました。
 一杯飲むのを考えれば1000円でも良いのですが、リアルで参加できない人や、より多くの人に見てもらう機会を増やす意味では、ネット上でも公開した方が良いのでは。
 2016年2017年の資料はアップされています。

 被害の状況は、一般市民に伝わっていないように思います。
 高山帯では鹿に下草が食べられているが、鹿の影響のない時代の植生を知っている人にとっては、とても不自然で荒廃している状況に見える。

 しかし、一般市民や登山者にとっては、「見通しが良くて公園みたい」と思われているかもしれない。

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 他県や他地域の例を知っていれば、その表現はしないのでは?という点がいくつかありました。

 新植地の鹿柵や農地の鹿柵について、神奈川県の施策を持ち上げてる場面もありました。
 北海道の道東では、畑や牧草地を守るため、「万里の長城より長い」と称される鹿柵があります。

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 活動自体は立派ですが、ではどうすればいいのか。

・農家に柵を設置し、廃棄農作物などで誘引しないようにする
・農家の自衛の罠設置
・とめさしの応援体制
・狩猟者により多く獲ってもらう
・県事業の管理捕獲やレンジャーによる鳥獣管理

 神奈川県は県として音頭をとっているので、比較的連携が上手くいっている印象がありました。

 管理捕獲や有害鳥獣駆除で、どのエリアをどれだけ捕獲するのかの駆除圧のマネジメントができているのかは、実際に中に入ってみないと分かりません。

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 今回のシンポジウムでは約100名が集まり、世間の関心の高さが伺えました。

 山盛の会としても、何かしらのサポートや市民の参加方法の間口を広げられると、より多くの人が関われると思います。

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 ライフル所持について神奈川県の人が回答していましたが、ピントが外れておりいまいちでした。

 農家さんが罠で防除をしており、ちょっとだけ話をしましたが、最終的には「経験とコツが必要」というオチでした。
 それは当然の話であって、その経験とコツをどう共有し、地域の獣害を防ぐかという話にまで広がらない。

 いきなり話を振られた農家さんも困ったと思いますが、浅い話になるのは、時間制限のあるシンポジウムにありがちです。

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 学問的な知見が、現場で動く狩猟者などにうまく伝わっていない印象もあります。
 ヘイキューブに醤油をかける話もありました。
 これにしても2017年の春に論文発表されて話題になっており、知っている人は知っていますが、被害対策している農家や狩猟者には届いていないかもしれない。

 そのあたりは狩猟者・有害捕獲実施者も受身にならず、自ら公開されている論文を検索するぐらいしなくてはいけないだろう。

 趣味の狩猟ではなく、個体数管理としての管理捕獲をするのであれば、大日本、県、郡の猟友会がこういった場に出て、得られた情報を会員に伝えてもいいのでは。

 哺乳類学会や野生動物と社会学会の会員となったり、論文を読んで噛み砕いて伝える役割の人が、猟友会にいてもいいと思う。

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