2016年10月2日日曜日

感想:これから始める人のための狩猟の教科書

 狩猟2年目のネット偏重の自分が読んだ、細かい突っ込みどころ(第2版)
 テレビドラマの背景や、時代劇の衣装が気になるような、細かい性格ですので、突っ込みどころも細かいです。

 まず、全体的にイラストの英語表記が多すぎます。
 情報というものは、人に伝わってなんぼです。
 日本語で書かれた、これから始める人のための本なのですから、カタカナ表記でいいのでは。
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P15 狩猟免許について
>実技試験は超難問の試験です。そこで受験前に各県猟友会が開催する狩猟免許初心者講習会へ必ず参加しておきましょう。

 必ず、という部分に引っかかる。
 自分の場合、銃や罠の実技試験については必要性を感じるが、筆記や鳥獣判別については、あまり必要性を感じなかったです。

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P29、刀剣の所持
>次に挙げるような刃物は刀剣類等として特別な定めがあり、所持する場合は都道府県教育委員会の登録(銃砲刀剣類登録)が必要です。
 登録できる刀剣類は『美術品として価値があるもの』とされているため、狩猟に使用されることはありません。

 銃刀法の14条だと思うのですが、この条項では日本刀のみが該当します。
銃砲刀剣類登録規則
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S33/S33F31501000001.html
http://law.webcrow.jp/gyouseihou/gyouseihanrei5-47.html


銃砲刀剣類所持等取締法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S33/S33HO006.html
(所持の禁止)
第三条  何人も、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、銃砲又は刀剣類を所持してはならない。
三  第四条又は第六条の規定による許可を受けたもの(許可を受けた後変装銃砲刀剣類(つえその他の銃砲又は刀剣類以外の物と誤認させるような方法で変装された銃砲又は刀剣類をいう。以下同じ。)としたものを除く。)を当該許可を受けた者が所持する場合

(許可)
第四条 次の各号のいずれかに該当する者は、所持しようとする銃砲又は刀剣類ごとに、その所持について、住所地を管轄する都道府県公安委員会の許可を受けなければならない。

六  狩猟、有害鳥獣駆除、と殺、漁業又は建設業の用途に供するため必要な刀剣類を所持しようとする者

 やっている例を聞いたことがありませんが、仮に狩猟に必要な刃渡り5.5cm以上の槍があったとしたら、4条6項で登録すればいいのでは。

 平成28年の警察白書
https://www.npa.go.jp/hakusyo/h28/data.html
 許可を受けた銃砲刀剣類の数の推移(平成23~27年)では、狩猟、有害鳥獣駆除用として平成27年には698の許可があります。

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P41 散弾の種類
 岩塩弾や花の種を詰めたフラワーショット弾なんてものがあるとは。
 しかし、これを紹介する必要がある?
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P45 地図とコンパス
>地図とプレートコンパスを組み合わせれば、万が一遭難した場合でも、現在地を特定する山立て(山座同定)が可能です。

 道具があっても使いこなせなければ意味がないので、その辺の記述が欲しい。

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P46 ライト
>ヘッドライトでも構いませんが、よりかさばらないペンタイプがおすすめです。

 自分の経験だと、圧倒的にヘッドライトがおすすめです。
 暗くなってきた中獲物を引っ張ったり、急斜面を降りる際、片手が塞がるペンタイプのライトは使えません。
 登山の常識としても、まずヘッドライトではないでしょうか。
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P76 散弾銃の説明
③道具から武器へ
>しかし塹壕戦において比類のない戦果を挙げたことからショットガンは武器の一つとして世界中に普及していきました。
>このように、散弾銃とショットガンは別物なので、日本では原則として鳥撃ち銃のコンセプトを引き継いだ散弾銃しか所持できません。

 ちょっと説明不足の感があります。
 塹壕戦のところにウィチェスター1897の銃剣付きのイラストが描いてありますが、P96のウィンチェスター1912と何が違うのでしょうか。
 「散弾銃とショットガンは別物」という表現も引っかかります。
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P78
>ストックに親指を入れる穴がついたサムホールストックというタイプは過去に許可が下りていましたが、近年では認められないケースが多いです。

 なぜ許可がおりないのか、空気銃では下りるのかなど、説明不足。
 P154,P217ではサムホールの銃のイラストが描かれています。
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P78
>銃床が軽いと射撃時の反動(リコイル)が強くなるので、威力の強い実包を使用する場合や、競技用で使用する場合は安定性の高い木製をお勧めします。

 お勧めしますの表記のブレ。
 リコイルに関しては、銃床だけではなく、銃全体や銃身の重さも関係してくるのでは。
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P80
散弾銃の銃身
>銃身の長さは射撃スタイルと銃全体のバランスで決めましょう。
>なお、銃身の長さによって、弾の拡散性や威力、射程距離はほぼ変わりません。

 2ページ後でチョークの説明をしており、「わずか0.01インチ(≒0.03mm)ずつしか変わりません。しかしこの差が散弾の拡散(パターン)に大きく影響を与えます」と自ら書いています。
 カモ猟では長い銃身を使う傾向にありますし、「ほぼ変わりません」 というのは、ちょっと雑に感じます。
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P81
>銃口に取り付けられるアクセサリーは色々ありますが、消音器(サプレッサ)を取り付けられるタイプは猟銃として認められていません。

 所持している銃に取り付け可能な消音器は所持禁止ですが、仮に銃身側にネジが切ってあっても、禁止する条項はないのでは。
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P85
先台(フォアエンド)
>単身銃の場合、弾倉と先台を装着させる栓(マガジンキャップ)には、スリングを装着させるスイベルや、レーザーポインタ、ライトなどのアクセサリー類が取り付けられる銃もあります。

 レミントンM870などだと思いますが、この表記は必要?
 どちらかというとタクティカルなもので、狩猟アイテムとして使えるものでは無いのでは。
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P91
火薬(パウダー)
>火薬の量や性質は弾頭の初速に大きな影響を与えるため、ライフル実包においては火薬を吟味する事が非常に重要になっていますが、散弾実包においては射撃の精度に大きな違いは無いため特に気にする必要はありません。

 いや、精度に影響するでしょう。
 国内で散弾リロードに使える火薬は3種類程度しか入手できませんが、燃焼速度は重要だと思います。
 スラッグのリロードの事をイメージしておらず、バラ弾だけのイメージで書かれたのでしょうか。
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P95
上下二連式
>この方式は銃身が2本ありますが、引き金は1本しか無い単引きタイプで、1発目(初矢)を撃った反動を利用して2発目(二の矢)が発射できるようになっています。そのため、初矢を撃った時の構え方が悪いと反動がうまく伝わらず2発目が発射できない回転不良を起こすことがあります。

 この表記は自動銃であって、上下二連ではないのでは?
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P96
 ポンプアクション式のイラストでウィンチェスター1912が描かれていますが、ちょっと古すぎでは?
 これから始める人のための本なのですから、現行モデルを描くべきでは。
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P100 キジの食性
 一年間の食性がイラストで描かれていますが、月の表記がJA,FB,MR…となっています。
 P159もヒヨドリ、P222のシカでも同じ。
 初心者向けの本で、こんな表記をする意味はあるのでしょうか?
 筆者の英語がカッコイイというオナニー感が透けて見えます。
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P105ニホンザル
 狩猟獣ではないという表記が無いのはまずいのでは。
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P107ニホンオオカミ
 大項目は「山に住む動物を知ろう!」なのですが、急に著者の主張が入ってきます。
P108
>行政はこの問題に対してハンターの非常勤公務員化(ガバメントハンター)や民間企業(認定鳥獣捕獲等事業者など)による非営利事業化を検討していますが、奥山や高山での調査・駆除活動はコストが非常に高くなり、長期継続的にもその実施は極めて困難なのが現実です。

 現時点ではそうかもしれませんが、神奈川県が5人の雇用で植生回復までもっていったように、手段の1つとしてはありなのでは。

P109
>オオカミを再導入する事で人間は生態系を管理する必要は無くなります

 いや、そんな単純なものではないと思う。
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P115 解体
>ナイフは皮剥ぎ専用のスキナーナイフを用いると便利です
 なぜイラストはケーパーナイフ?
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P137
自転車ハンティング
>また自転車のサドルはポッドの代わりにもなります

 「ポッド」って何?急に出てきたな。
 銃を委託するものをいうのは何となくわかりますが、「これから始める人」向けの本としては不親切。

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P145
 エアライフル所持のフローチャートだが、全部英語で書かれていて、何がしたいのかわからない。
 この本で一番酷いイラスト。
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P187
ライフル猟の世界へようこそ
②まずはハーフライフルから

 ライフル10年やこれから銃を持つ人のための本なのだから、ハーフライフル・サボット銃はライフル銃ではなく、銃所持許可のカテゴリとして、散弾銃として扱うべきなのでは。

 なぜハーフなのかという説明が無い。
 ハーフライフルという表記が初めて出てくるのはP89だが、急な印象がある。

 そしてイラストがサベージM210だが、現行モデルの212にするべきでは。
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P190
③スリング
 ライフルスリングとサファリスリングが紹介されているが、イラストの順序が逆の方が理解しやすい。
 そして、ライフルスリングイラストが先端が先台ではなく、銃身に取り付けられているのにも違和感がある。
 P100の写真でも銃身にスリングを取り付けています。
 空気銃では先台にスイベルスタッドが無い場合があったり、レバーの都合で重視にスリングを巻くこともあるが、一般的な方法ではない。
 シルエットになっているが、P187のサベージM210なら先台にスリングを付けるべき。

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P192,193
 サーマルビジョン、風速計を紹介していますが、そんなに普及している装備とは思えません。
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P194
 仰臥位(スパイン)を紹介しています。
 軍隊的なテクニックとしてはありますが、現代の狩猟では一般的ではないような。
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P196
 レミントンM870の機関部をイラストにしていますが、シアーの外側の棒は、トリガーとは関係ないです。
 内部の構造を書かないと、ちょっと分かりにくい。
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P206
④鉛中毒
 北海道の例を書いてほしかった。
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P208
⑤ハンドローディング
>なおプラスチックケースの散弾薬莢でもハンドローディングは可能ですが、コストはあまり変わらないうえライフル弾に比べて火薬の詰め方が難しいため、現在ではあまりみられなくなりました。

 著者の認識ではそうかもしれないが、スラッグの世界や海外では、まだまだ残っていると思いますが。
 
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P213
⑤テレスコープサイト(オプティカルサイト)
>なお、北海道以外の猟場では、2倍程度のスコープが良く使用されています。

 今季から本州の猟は初めてですが、本州のライフル持ちの人でも2-7倍などのスコープを使っているようです。
 2倍ではライフルの特徴を生かせないような。
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P215
⑦レーザーサイト(オプティカルサイト)
 いわゆるレーザーポインタですが、付けている例を、自分の回りではあまり聞いたことがありません。
 それほどメジャーな装備ではないと思うのですが。
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P227 ツキノワグマ
>ケヤキやブナなどの大樹には理論上寿命というものは存在せず、環境が適していれば永久に成長を続けます。
 このような大木の多い森は地面に光が届かないため、新たな植物が成長せず植生が偏った森になってしまいます。
 このような中でツキノワグマの枝打ち行為は森の風通しを良くし、古い気に死をもたらすことで森林の更新を高めているのです。

…熊森協会っぽい主張ですね。
 遷移や攪乱、木の寿命など突っ込みどころが多いです。

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P232 野外解体
 ハンガーに鹿が吊るされ、プラスチックバンドが描かれていますが、それについての文章がありません。
 糞や腸の内容物が肉につかないための措置ですが、説明が無いのは勿体ない。
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P237 シカケバブ
>古くはシカの脂は食用ではなく、蝋や断熱材などに使用されていました。
興味があるので、そのうち調べたい。
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P245
ダニ対策
>より安全性を高めるために、山に入る前と後には服と靴に殺虫剤をかけておきましょう。
ただし殺虫剤は蚊やゴキブリなどのタイプは効果がありません。
 ダニはクモに近い仲間なので、クモに効くタイプか専用のタイプを使用しましょう。

 ディートなどの忌避剤は聞くが、殺虫剤を山に入る前にかけるのは聞いたことがなかった。
 あと、クモに効くタイプの薬剤の有効成分って何?
 ここまで書くのなら、具体的な商品名を書いてほしい。

>もしどうしても病院に行けない場合は、ワセリンやグリセリンなどを縫ってマダニの呼吸器を塞ぎ自然脱落するまで様子を見ます。
 これはあまり推奨しないと、アメリカ政府の病気系のサイトで見たような。
 参考として自分のブログの記事(ダニ対策の薬品など
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P267 電気止めさし
>漏電対策(ゴム手袋着用、メガーチェックなど)は確実に行いましょう

 メガーチェックという言葉は、あまり一般的ではないです。
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P270叩き止め(くくり罠)
>鈍器はバットなどを用いますが、初心者や力の弱い女性は遠心力で高い破壊力を出せるフレイルや鎖分銅が良いでしょう。
>棍棒は空振りすると、地面を強くたたいて腕を痛める危険性があります。

 フレイルや鎖分銅ので脳天を直撃させるのは相当な修練が必要だと思いますし、脳天に当たらない場合、無駄に苦しめるのでは。
 棍棒状のものがメジャーだと思いますし、分銅が跳ね返ってくるより安全では。
 写真がついているので、使っている地域があるのだとは思いますが、自分の周りでは聞いたことがありません。
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P280くくり罠
>また、ワイヤーロープは地中を通した方が獲物に気が付かれにくくなるので、フックとなる工具を使用します。専用のものは売られていないのでスネークフックのようなものを自作する必要があります。

 イラストにピックアップツールが描かれていますが、この文章とイラストでは、どのように使うのか想像がつきません。
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P338 網猟の装備
>現代では自分で藁を編む事は無くなりましたが「藁編み」も伝統猟芸の一つとして継承されるべき芸です。

 自分はアラフォー世代ですが、藁縄は農村のお祭りの準備で作ったことがあります。
 この手の著者の主張がちょっと引っかかります。

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P339 
>鳥類は赤外線を見ることができるため赤外線照射装置(イルミネーター)の付いた暗視装置は使用できません。
P134 >カモ類は夜目も利くため、どんなに暗い場所から忍び寄ったとしても間違いなくきづかれてしまいます。


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P342 ニホンジカのコール猟
 網猟の項目ではなく、銃猟やシカの項目に書くべきでは。

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P307 キツネ

P231の肉の冷却についても言えるが、エキノコックスについて書かれていない。
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P349 ノウサギ
>(1950年代以降)また同時期から里山で生産される材木や木炭の需要が激減すると、伐採・植林という里山の更新が止まり、下草地が減少したことで、ウサギの生息数も大きく減少しました。

 野兎病などもありますし、里山以外では伐採造林を継続的にしているので、ちょっと書き方が乱暴な印象。
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P357 丸太結び(ログヒッチ)
崖から銃を下す際の例が載っていますが、ちょっと想定しにくい。

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